貧血Q&A
Q: まず、貧血とは何ですか?
A: 内科でいう貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度(ヘモグロビン量/血液量)が、正常値より少ない状態です。
Q: 貧血でクリニックを受診する方には、どのような方が多いですか?
A: 貧血で受診される時には、大きく二つの場合が考えられます。ひとつは、「貧血の症状」で受診される場合。もうひとつは、「採血結果の貧血」で受診される場合です。
Q: その二つでは何か違うのでしょうか?
A: 「貧血の症状」には、有名なものとして動悸・息切れ・疲れやすさ・顔色が悪いなどがあります。また、めまいや立ちくらみで受診される方も多くおられます。このような方に採血をしますと、ヘモグロビン濃度が低い方もおられますし、正常の方もおられます。
そうすると、採血が正常の方は、貧血ではありません。しかし症状 ―体調の悪さー は、実際にあるわけです。ですから、貧血が無いことが分かれば、次に貧血以外に、症状の原因を探します。それには、(採血前の)問診や診察が役に立つことが多く、時に心臓や呼吸器などの専門家にご紹介する場合もあります。
一方で、頭痛が貧血の症状と気づかずに、脳外科を受診され、採血で著明な貧血が見つかる方もおられます。内科に紹介され、適切な検査・診断に基づき貧血を治療すると、頭痛も治ります。
Q: では、採血で貧血がある場合の診療はどうですか?
A: 貧血の症状があって受診されて、採血で貧血(ヘモグロビン濃度の低下)が見つかった方、あるいは、症状は無いが、健診などの採血で貧血を指摘されて受診された方。このような方の場合、まず採血の結果から、どのタイプの貧血かを考えます。これには通常貧血の数値と同時に測定される数値を使います。
次に、その貧血のタイプに応じて、追加の検査を検討します。貧血のタイプにより、血中の鉄やビタミンといった採血や、胃カメラや便潜血検査、あるいは婦人科診察の場合もあります。白血球や血小板の検査が必要な場合もあります。
Q: 貧血と言うと、いま紹介のあった鉄欠乏性貧血が有名ですが、その他にはどのような貧血があるのでしょうか。
A: 貧血には多くのタイプがありますが、いくつか例をお示しします。
最近多いのは、「アスリートの貧血」*と言われる貧血です。文字通り、マラソンなどをされるアスリートの方に、採血で貧血が見つかる例です。しかしアスリートだから病気にならないとも限らないので、「アスリートの貧血」と診断する前に、慎重に検討することが大事です。また「アスリートの貧血」と診断した後も、それこそご本人に伴走するように、経過を見ていくことも重要です。
体のどこかに慢性の炎症があることにより起こる貧血があります。これは体のどこと定まってなく、また慢性であるために、ご本人もその場所の異常に慣れてしまって、すぐには貧血と関係が分からない事が多いです。原因の炎症を診断・治療すると、貧血も改善します。貧血の治療に、全身の診療が必要な例です。
また貧血は濃度(ヘモグロビン量/血液量)の低下ですから、ヘモグロビンの減少ではなく、血液量(≒水分)の増加で起こる貧血もあります。妊娠後期に多くの妊婦が採血で軽度の貧血を示すのはこのためで、出産後自然に貧血は改善します。
しかし心不全のある方では、心不全の悪化で体に水分が貯まり、採血で貧血を示すことがあります。この場合は、心不全の治療が必要で、それにより貧血も改善します。
ところで、どのタイプの貧血であっても、急速に減る場合は症状を感じやすく、ゆっくりと減る場合は自覚症状を感じないことが多いようです。正常の1/3程度まで減っている貧血の方でも症状が無いと仰ることもあります。症状と数値が必ずしも一致しないことがあります。
Q: 貧血と言っても、原因・経過は色々あるのですね。患者としては、少しでも早く貧血の原因を知りたいところですが。
A: おっしゃる通りです。問診に際し、できるだけ詳しく症状・経過をお聞きすることが、より早く正確な診断への近道です。特に以前の採血結果があれば、ご本人と一緒にその経過をたどるだけでも、かなり診断に近づきます。
Q: 追加の検査や治療が必要になった場合、紹介を受けることはできるのでしょうか?
A: 他院で検査・治療が必要な場合は、ご自宅や職場の近くなど、その他ご本人のご希望をお聞きして、適切な病院・クリニックにご紹介するように致します。
*学生の運動選手の貧血については、恩賜財団済生会の記事をご参照ください。運動選手の貧血に対し鉄剤を静脈注射した場合の鉄毒性については、日本陸上競技連盟のガイドラインをご覧ください。
ただし、「アスリートの貧血」かどうかの診断に関しては、中年以降では、胃腸や婦人科疾患による貧血も起きやすくなるため、学生とは診断過程が異なります。また、学生では、体質性(遺伝性)貧血の方も稀におられます。